遊びやスポーツで育む計画性:小学生の『先のことを考える力』を伸ばす保護者の関わり方
遊びやスポーツで育む「先のことを考える力」(計画性・予測力)
子供たちが将来社会で活躍するためには、学力だけでなく、様々な非認知能力が重要であると言われています。その中でも、「先のことを考える力」、すなわち計画性や予測力は、目標を達成したり、変化に対応したりするために欠かせない能力です。
この力は、特別な訓練をしなくても、実は子供たちが日々熱中している遊びやスポーツの中に育むヒントがたくさん隠されています。保護者の皆様は、どのように子供たちの「先のことを考える力」を自然な形で伸ばしていけるのでしょうか。
この記事では、遊びやスポーツがどのように子供の計画性や予測力を育むのか、そしてご家庭で実践できる具体的な関わり方について解説します。
非認知能力としての「計画性」とは何か
非認知能力とは、学力テストなどでは測りにくい、意欲、協調性、粘り強さ、自制心といった、個人の内面的な特性や社会情勢的なスキルを指します。「計画性」もまた、この非認知能力の一つとして広く認識されています。
子供にとっての計画性とは、学術的な定義に囚われず平易に言えば、「何かを達成するために、必要な手順や準備を考え、実行する力」、そして「次に何が起こるかを予測し、対応を考える力」と言えます。
例えば、 * 旅行に行く前に持ち物をリストアップする。 * 今日の宿題の量を考え、いつ取り組むか決める。 * 友達との待ち合わせ時間を決め、そこへ行くまでの道順を考える。
これらはすべて計画性に関わる行動です。この力は、学習面での自己管理能力を高めるだけでなく、将来のキャリア形成や人間関係の構築にも深く関わってきます。計画性や予測力があることで、子供たちは将来の目標に向けて逆算して考えたり、予期せぬ出来事にも落ち着いて対応したりすることができるようになります。
スポーツや遊びが「計画性・予測力」を育む具体的な場面
子供たちの日常的な遊びやスポーツの場面には、自然と計画性や予測力を働かせる機会に満ち溢れています。
スポーツの場面
- チームスポーツでの戦略・戦術: サッカーやバスケットボールなどのチームスポーツでは、相手チームの動きや陣形を予測し、味方と連携してパスコースや攻め方を考えます。「相手がこう来るなら、次はこう動こう」と、瞬時に状況を判断し、先のプレーを組み立てる経験は、予測力と計画性を同時に養います。
- 個人スポーツでのペース配分: 長距離走や水泳などでは、目標タイムを達成するために、最初から全力でなく、自身の体力やコースの特徴を考慮してペース配分を考えます。これは、目標達成に向けた短期的な計画性を育む経験です。
- 練習メニューの組み立て: 習い事などで、コーチの指導のもと、特定の技術向上や体力アップのために練習内容や量を計画的にこなす経験も、長期的な目標達成に向けた計画性の基礎となります。
- 試合前の準備: 持ち物の確認、ユニフォームの準備、ルールの再確認なども、スムーズに活動を行うための事前の計画行動です。
遊びの場面
- 組み立て遊び(積み木、ブロックなど): 頭の中で完成形をイメージし、「この形を作るためには、どのパーツを先に置くべきか」「崩れないようにするにはどうすればいいか」と手順や構造を考える過程は、複雑な計画性を育みます。
- ドミノ倒し: 倒れるルートを正確に予測し、ドミノの間隔や向き、障害物の避け方を緻密に計画して並べます。これは、結果を予測し、それに基づき手順を考える優れた訓練となります。
- 鬼ごっこや隠れんぼ: 鬼の動きや友達の行動を予測し、捕まらないための逃走ルートや隠れる場所、効果的な追いかけ方を戦略的に考えます。
- ごっこ遊び: 登場人物の役割や物語の展開、次に何が起こるかを考えながら遊びを進めます。「次はこうなるはずだから、こう言ってみよう」といった予測に基づいた行動は、コミュニケーション能力と連動して計画性を育みます。
- ボードゲームやカードゲーム: 相手の手や次の展開を予測し、自分の手札やコマの動かし方を計画します。複数の可能性を考慮し、最善と思われる戦略を立てる経験は、論理的思考力と計画性を同時に養います。
これらの例からもわかるように、子供たちは遊びやスポーツを通じて、意識せずとも自然な形で「先のことを考える力」を働かせ、育んでいます。
保護者が家庭で実践できる具体的なヒント
忙しい日々の中でも、少しの意識や声かけで、子供たちの計画性や予測力をサポートすることができます。
具体的な声かけの例
- 準備の促し: 遊びや外出の前に「これを始める前に、何か必要なものはないかな?」「持っていくもの、一緒に確認してみようか」と声をかけ、リストアップや準備の手順を一緒に考えさせます。
- 次のステップを考える質問: 遊びや課題に取り組んでいる最中に「次はどうしようか?」「どうすればもっとうまくいくかな?」と問いかけ、子供自身が次の行動や手順を考えるように促します。
- 結果の予測を促す: 何かをする前に「もしこうしたら、どうなると思う?」「こうすると、どうなるかな?」と問いかけ、行動の結果を予測する練習をさせます。
- 見通しを持たせる: 「これが終わったら、次は何をしようか?」「明日は〇〇があるから、今日はこれを済ませておこうね」など、少し先の見通しを立てる手助けをします。
- 振り返りからの改善計画: 遊びや活動が終わった後に「今日やってみてどうだった?」「次にやるときは、何か変えてみたいことはある?」と振り返りを促し、次の計画に活かす視点を提供します。
家庭での環境づくりのヒント
- 「自分で考える時間」を大切に: 子供が遊び方ややり方に迷っていても、すぐに答えや指示を与えるのではなく、「どうしたらいいかな?」「一緒に考えてみようか」と問いかけ、自分で解決策や手順を考える機会を与えます。
- 簡単な「おまかせ」から: お手伝いや自分の身の回りのことなど、子供に任せられる簡単なタスクを与え、手順を考えながら取り組む経験を積ませます。「朝起きたら、まず何をしたらいいかな?」「おもちゃを片付けるには、どういう順番でやると早いかな?」
- 一緒に「計画する」経験: 週末の家族の予定や、次に取り組みたいことなどを、子供と一緒に話し合って簡単な計画を立ててみます。「今週末、どこに行きたい?」「そこに行くには、何時に家を出る必要があるかな?」「持ち物は何がいる?」
- 目標設定と振り返りの習慣: 難しいことでなくて構いません。「今週中にこの本を読む」「明日は〇時までに寝る」など、簡単な目標を立て、週末などに「達成できたか」「どうすれば達成できたか」を振り返る習慣をつけます。
- 遊びの質を大切に: テレビやゲームだけでなく、積み木、ブロック、ボードゲーム、おままごとなど、子供自身が遊びの筋道やルールを考えたり、予測を立てたりする必要がある遊びを取り入れます。
まとめ
子供たちの「先のことを考える力」である計画性や予測力は、将来の様々な局面で彼らを助ける重要な非認知能力です。この力は、スポーツや遊びといった子供にとって最も身近で楽しい活動の中で、自然と育まれていきます。
大切なのは、完璧な計画を立てさせることや、常に予測通りにいくことではありません。子供自身が「どうすればいいかな」「次は何が起こるかな」と考え、試行錯誤するそのプロセス自体が、計画性や予測力を着実に伸ばしていくのです。
保護者の皆様は、過度に先回りしたり、答えを与えたりするのではなく、子供たちの遊びや活動を見守りながら、適切な声かけや環境づくりを通して、彼らが自ら考え、計画し、予測する機会を増やしていくことが大切です。日々の関わりの中で、子供たちの「先のことを考える力」を温かくサポートしていきましょう。