遊びやスポーツで鍛える「自分で決める力」:小学生の意思決定力を高める保護者の関わり方
遊びやスポーツで育む「自分で決める力」:小学生の意思決定能力とは
子供たちが将来、予測不可能な社会で主体的に生き抜くためには、「自分で考えて決める力」、すなわち意思決定能力が非常に重要であると言われています。この能力は、机上の学習だけでなく、日々の遊びやスポーツといった体験の中で自然と育まれる非認知能力の一つです。
「非認知能力」という言葉に馴染みがなくても、子供たちが遊びの中で「次はこうしよう」「友達と協力してやってみよう」と自ら考え、行動を選択する場面は想像しやすいのではないでしょうか。この記事では、遊びやスポーツがどのように子供たちの意思決定能力を育むのか、そして保護者の皆様が家庭でどのように関わることができるのかについて解説します。
子供の意思決定能力が大切な理由
意思決定能力とは、様々な選択肢の中から状況に応じて最適なものを判断し、行動を選択する力です。これは単に何かを選ぶという行為に留まらず、情報を収集・分析し、結果を予測し、責任を持つという一連のプロセスを含みます。
子供の成長過程において、意思決定能力は以下のような様々な場面で必要とされます。
- 学習面: どの問題から解くか、どの方法で取り組むか
- 社会生活: 友達との意見の違いをどう調整するか、遊びのルールをどう決めるか
- 日常生活: 今日何を着るか、放課後何をして過ごすか
そして将来、進路の選択、仕事での判断、人生における重要な決断など、自分で考え、責任を持って行動する力が求められます。遊びやスポーツを通じて幼い頃からこの力を育むことは、子供が自立し、困難を乗り越えていくための土台となります。
スポーツや遊びが意思決定能力を育むメカニズム
スポーツや遊びの場面には、意思決定を繰り返し行う機会が豊富にあります。特定のスポーツや遊びの例を挙げて、具体的に見ていきましょう。
サッカーやバスケットボールなどのチームスポーツ
- 状況判断と瞬時の選択: 試合中、ボールを持った子供は「ドリブルするか」「パスするか」「シュートを打つか」など、複数の選択肢の中から瞬時に最善だと思う判断を下す必要があります。相手の位置、味方の動き、ゴールまでの距離など、刻々と変化する状況を分析し、判断することが求められます。
- 結果のフィードバック: 自分のパスが通った、ドリブルが成功した、あるいは失敗したといった結果がすぐに返ってきます。このフィードバックを通じて、自分の判断が適切だったかを振り返り、次に活かす学びが得られます。
- チームでの意思決定: 作戦を立てたり、プレイ中にチームメイトと連携したりする過程で、互いの意見を調整し、合意形成を図りながら集団としての意思決定を行う経験を積みます。
鬼ごっこや隠れんぼなどの鬼ごっこ系遊び
- 戦略と予測: 鬼からどう逃げるか、どこに隠れるか、どのルートを通るかなど、相手の動きを予測しながら最適な戦略を立て、判断します。
- リスクとリターンの判断: 見つかりにくい難しい場所に隠れるか、見つかりやすいが逃げやすい場所に隠れるかなど、リスクとリターンを考慮した判断を行います。
ブロック遊びやごっこ遊びなどの創作・自由遊び
- 目標設定と手段の選択: 「どんなものを作ろう」「どんなお話にしよう」と目標を決め、そのために「どのパーツを使うか」「どういう役割分担をするか」といった手段を選択します。
- 試行錯誤: 想定通りにいかない場合、「どうすればうまくいくか」と原因を考え、別の方法を試すという意思決定のプロセスを繰り返します。
これらの例のように、遊びやスポーツは、子供たちが自ら考え、判断し、行動し、その結果から学ぶという意思決定のサイクルを自然に回すための最適な環境を提供します。
家庭でできる!意思決定能力を育む保護者の関わり方
日々の生活や遊び、スポーツの場面で、保護者が少し意識して関わることで、子供の意思決定能力をより効果的に育むことができます。
1. 子供自身に「決める機会」を与える
日常生活の中で、子供に自分で決めさせる機会を意識的に増やしましょう。
- 例:
- 「今日の服、自分で選んでみようか」
- 「今日の遊び、何する?いくつか候補を出してみる?」
- 「おやつ、どっちにする?」
簡単なことから始めて、少しずつ選択肢や判断の難易度を上げていくことが大切です。選択肢が多すぎるとかえって混乱するため、最初は2〜3個に絞るのが良いでしょう。
2. 決定の「理由」や「考え」を尋ねる声かけ
子供が何かを決めたとき、その理由や考えを聞いてみましょう。
- 例:
- 「どうしてそれを選んだの?」
- 「何を考えてそう決めたの?」
- 「それを選ぶと、どんな良いことがあるかな?」
これは、子供に自分の思考プロセスを言語化させ、論理的に考える練習になります。理由がうまく説明できなくても、「そうか、そういう風に考えたんだね」と受け止め、考えたプロセス自体を承認することが重要です。
3. 結果よりも「プロセス」を大切にする
子供が自分で下した判断の結果がうまくいかなかったとしても、頭ごなしに否定したり、「だから言ったでしょう」と言ったりするのは避けましょう。
- 例:
- 「自分で考えて決めたんだね。その気持ちが大切だよ」
- 「今回はうまくいかなかったけど、次にどうしたらいいか、一緒に考えてみようか」
- 「この経験から、どんなことが学べたかな?」
失敗は、意思決定能力を磨くための重要な学びの機会です。自分で決めたからこそ、失敗から多くのことを学び、次の判断に活かすことができます。自分で決めたプロセスを肯定的に捉えることで、失敗を恐れずに挑戦する意欲も育まれます。
4. 考える時間を与える
子供が何かを決めるとき、すぐに答えを出すよう急かさず、考えるための時間を与えましょう。じっくり考えることで、より深く状況を分析し、慎重に判断する力が養われます。
5. 保護者自身の意思決定プロセスを見せる
保護者自身が日々の生活の中で何かを決める際、その考え方や理由を子供に話してみるのも良いでしょう。「今日のおかずは、〇〇と〇〇があったけど、野菜もたくさん摂りたいから〇〇にしようかな」のように、簡単なことから見せていくことで、子供は意思決定の具体的なプロセスを学びます。
まとめ
遊びやスポーツは、子供たちが楽しみながら意思決定能力、すなわち「自分で考えて決める力」を育むための素晴らしい機会に溢れています。チームでの連携、瞬時の状況判断、試行錯誤、失敗からの学び。これら全てが、子供たちの意思決定能力を鍛える貴重な経験となります。
そして、保護者の皆様の温かく見守る視線と、適切なタイミングでの声かけや関わり方が、その成長をさらに力強く後押しします。子供が自分で考え、決める機会を意識的に作り、結果だけでなくプロセスを大切にすること。これらの日々の積み重ねが、子供たちの未来を切り拓く確かな力となることでしょう。