遊びやスポーツで育む小学生の「やり抜く力」：継続するモチベーションをサポートする保護者のヒント
非認知能力としての「やり抜く力」の重要性
お子様が遊びやスポーツに熱中する姿をご覧になる際、「この経験が将来にどう繋がるのだろう」とお考えになる保護者の方もいらっしゃるかもしれません。特に、うまくいかない時や困難に直面した時に、諦めずに続ける力、すなわち「やり抜く力」は、学業や社会生活において非常に重要な非認知能力の一つです。
この「やり抜く力」は、「グリット（Grit）」とも呼ばれ、目標達成のために情熱を持って取り組み、困難や失敗に直面しても諦めずに粘り強く続ける力として、近年注目されています。IQや学力テストだけでは測れない、内面的な強さを示す指標と考えられています。そして、この力は生まれつきのものではなく、日々の経験や周囲との関わりの中で育まれることが分かっています。
特に、子供たちが主体的に取り組む遊びやスポーツの時間は、この「やり抜く力」を育むための絶好の機会を提供してくれます。
なぜ遊びやスポーツが「やり抜く力」を育むのか
遊びやスポーツの場面には、「やり抜く力」を構成する要素が自然に含まれています。
- 目標設定と達成: 遊びにはルールがあり、スポーツには勝敗や技術習得といった目標があります。これらの目標に向かって努力する過程で、子供は目的意識を持ち、それに向かって行動することの意義を学びます。
- 困難と失敗からの学び: 練習してもすぐに上手にならない、試合に負ける、友達とうまくいかないなど、子供は様々な困難や失敗を経験します。これらの経験は、挫折感を味わう一方で、「どうすれば乗り越えられるだろう」「次はこうしてみよう」と考える機会を与え、「失敗は終わりではなく、学びの始まりである」という認識を育みます。
- 努力の成果の実感: 練習を重ねることで技が身につく、チームで協力して目標を達成するなど、自分の努力が成果に繋がる経験は、子供の内発的なモチベーションを高め、「頑張ればできる」という自己効力感を育みます。
- 内発的な動機づけ: 好きな遊びやスポーツに没頭する経験は、「楽しいからやりたい」「もっと上手になりたい」という内発的な動機を強く引き出します。この内発的な動機は、外部からの報酬や強制よりも、継続する力を養う上で強力な原動力となります。
このように、遊びやスポーツは、子供が自らの意思で目標を設定し、困難を乗り越え、努力の結果を実感するという一連のプロセスを自然に経験できる場であり、「やり抜く力」の育成に深く関わっています。
保護者ができる「やり抜く力」をサポートする関わり方
お子様の「やり抜く力」や継続するモチベーションを育むために、保護者としてどのような関わりができるでしょうか。日々のコミュニケーションや環境づくりの中で実践できるヒントをいくつかご紹介します。
1. 結果だけでなく「過程」に注目し、具体的に褒める
試合の勝敗や技術の習得といった結果だけでなく、そこに至るまでの「過程」を具体的に認め、褒めることが重要です。「今日の練習、最後まで集中して頑張っていたね」「負けて悔しかったのに、次の練習方法を考えていて感心したよ」「難しい技だったけど、諦めずに何度も挑戦していたね」といった声かけは、子供が自分の努力や工夫に価値を感じ、継続するモチベーションを高めます。
2. 子供自身の「やりたい」気持ちを尊重する
子供が心から「やりたい」と感じている活動に取り組むことが、最も強いモチベーションの源泉となります。保護者の期待や周囲の影響だけでなく、子供自身の興味や関心を大切にし、自主的な選択をサポートしてください。ただし、一度始めたことを安易に諦めさせず、「なぜやりたいと思ったのか」「どんな目標があるのか」を一緒に確認する時間を持つことも大切です。
3. 困難や失敗に寄り添い、共に考える
子供がうまくいかず落ち込んでいるとき、すぐに解決策を与えたり、「頑張れ」と励ますだけでなく、まずは子供の気持ちに寄り添うことが大切です。「悔しいね」「大変だったね」と共感を示し、その上で「何が難しかった？」「次はどうしたらいいかな？」と、子供自身が状況を分析し、次に繋げるための思考を促します。失敗を否定せず、「失敗から学んで成長できるんだよ」というメッセージを伝えてください。
4. 小さな目標設定と達成をサポートする
大きな目標だけでは、達成までに時間がかかり、途中で挫折しやすくなることがあります。例えば、「逆上がりできるようになる」という大きな目標に向けて、「今日は腕の力を意識してぶら下がってみよう」「来週までに〇回、足上げをしてみよう」のように、達成可能な小さなステップを設定することをサポートします。小さな目標をクリアしていく経験は、成功体験を積み重ね、継続する自信に繋がります。
5. 保護者自身が「やり抜く姿」を見せる
保護者自身が、仕事や趣味、学習など、何か困難なことに粘り強く取り組む姿を見せることも、子供にとっては良いモデルとなります。「これは難しいけれど、もう少し頑張ってみよう」「失敗したけど、次はこう工夫してみるよ」といった言葉や姿勢は、子供に「やり抜くこと」の価値を伝えます。
まとめ
遊びやスポーツは、単に体を動かすだけでなく、子供たちが将来を生き抜く上で不可欠な「やり抜く力」や継続するモチベーションといった非認知能力を育む豊かな土壌となります。保護者の皆様の温かい見守りと適切なサポートは、子供たちが困難に立ち向かい、自らの力で道を切り拓いていくための大きな力となるでしょう。
日々の忙しさの中でも、少しだけ立ち止まり、お子様が遊びやスポーツを通して何を学び、何を感じているのかに目を向けていただければ幸いです。結果にとらわれすぎず、お子様の成長のプロセスを楽しみながら、その「やり抜く力」を育んでいきましょう。