遊びやスポーツで子供の非認知能力を伸ばす:結果ではなく過程に注目する保護者のヒント
非認知能力を育む上で、結果と同じくらい大切な「過程」の視点
お子様の成長を見守る中で、「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えたかもしれません。この非認知能力とは、数値で測ることが難しい、内面的な力のことです。例えば、目標に向かって頑張る力、友達と協力する力、困難に立ち向かう粘り強さなどが含まれます。これらの力は、将来お子様が社会で生きていく上で、学力と同様、あるいはそれ以上に重要であると言われています。
保護者の皆様の中には、「非認知能力を育てたいけれど、具体的にどうすれば良いか分からない」「習い事や遊びを通じて、非認知能力はどのように育まれるのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
当サイトでは、スポーツや遊びを通じて自然と育まれる非認知能力に焦点を当てて情報を発信しています。今回は、その中でも特に大切にしていただきたい「結果」ではなく「過程」に注目することの重要性と、具体的な関わり方についてお伝えします。
なぜ、遊びやスポーツの「過程」が非認知能力育成に重要なのか
遊びやスポーツには、常に「結果」が伴います。試合での勝ち負け、練習の成果、成功や失敗など、目に見える結果に一喜一憂することは自然なことです。しかし、非認知能力が育まれるのは、実はこの「結果」そのものよりも、そこに至るまでの「過程」においてです。
非認知能力は、子供たちが目標を設定し、計画を立て、練習を重ね、仲間と協力し、困難に立ち向かい、試行錯誤し、失敗から立ち直り、そして振り返る、といった一連のプロセスの中で発揮され、磨かれていきます。
もし、保護者が結果のみに過度に注目したり、結果を強く求めすぎたりすると、子供は失敗を恐れるようになり、新しい挑戦を避けたり、結果が出ないことに対して自信を失ったりする可能性があります。これでは、粘り強さや挑戦する気持ち、自己肯定感といった非認知能力の育みが阻害されてしまう恐れがあります。
一方、過程に焦点を当てることで、子供たちは結果にかかわらず、自身の努力や工夫、友達との協力、乗り越えた困難そのものに価値を見出すことができるようになります。これにより、「頑張ればできるようになる」「仲間と協力するのは楽しい」「失敗しても次がある」といった前向きな学びや気づきを得て、非認知能力を着実に育てていくことができるのです。
遊びやスポーツにおける「過程」に含まれる要素
遊びやスポーツにおける「過程」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。以下のような要素が含まれます。
- 目標設定と計画: 「どうやったら鬼に捕まらないかな?」「次の試合でこの技を使えるように練習しよう」など、自分たちで考えたり、コーチや友達と話し合ったりして目標を決め、達成のための方法を考えます。
- 挑戦と試行錯誤: 新しいルールを試す、難しい技に挑戦する、いつもと違うポジションでプレーするなど、未知のことに取り組み、上手くいかない場合はやり方を変えてみます。
- 努力と継続: 目標達成や上達のために、繰り返し練習したり、諦めずに取り組んだりします。
- 協力とコミュニケーション: 友達やチームメイトと声を掛け合ったり、役割分担をしたり、お互いを励まし合ったりします。
- 困難への対処: 負けて悔しい思いをする、練習が辛い、怪我をする、友達と意見がぶつかるといった困難な状況に直面し、それらを乗り越えようとします。
- 感情のコントロール: 嬉しい、悔しい、腹が立つ、といった様々な感情と向き合い、適切に表現したり、切り替えたりすることを学びます。
- 振り返り: 遊び終わった後や試合後に、「今日は何が楽しかった?」「どこが上手くいかなかった?」「次はどうしたらもっと良くなるかな?」と考えます。
これらの要素は、非認知能力そのもの、あるいは非認知能力を育む上で重要な行動そのものであると言えます。結果はその過程を経て得られる一つの側面にすぎません。
保護者が「過程」に注目するための具体的な関わり方
では、保護者の皆様は、お子様の遊びやスポーツの過程にどのように注目し、非認知能力の育みに繋げることができるでしょうか。
1. 結果よりも過程に焦点を当てた声かけ
お子様が遊びやスポーツから帰ってきた時、ついつい「勝ったの?」「結果はどうだった?」と尋ねてしまいがちかもしれません。もちろん結果も大切ですが、それに加えて、過程に注目した声かけを意識してみましょう。
- 努力や工夫を具体的に褒める/認める:
- 「今日の練習で、この前の課題だった〇〇ができるようになってきたね。頑張ったね!」
- 「あの場面で、チームのために△△君を応援していて偉かったね。」
- 「負けちゃったのは残念だけど、試合で新しい作戦を試せたのが次につながるね。」
- 挑戦したこと、粘り強さを評価する:
- 「苦手なことにも諦めずに挑戦していて、すごいね。」
- 「最後までボールを追いかける姿、立派だったよ。」
- 友達との関わりに注目する:
- 「〇〇君と協力して△△できたんだね、素晴らしいね。」
- 「友達が失敗した時に、優しい声をかけてあげていたね。」
- 子供自身に過程を振り返らせる問いかけ:
- 「今日一番楽しかったことは何?」
- 「今日の鬼ごっこ、どうやったら捕まらなかったか、工夫したことはある?」
- 「練習で難しかったことは? それをどう乗り越えたの?」
- 「次に同じことがあったら、どうしてみたい?」
このような声かけは、子供が結果だけでなく、自身の内面的な成長や行動に目を向けるきっかけとなります。
2. 失敗を非難せず、学びの機会と捉える姿勢
遊びやスポーツには失敗がつきものです。シュートを外す、転ぶ、試合に負けるなど、様々な失敗を経験します。この時、保護者が失敗を厳しく非難したり、落ち込んだりする姿を見せすぎると、子供は失敗を恐れるようになります。
失敗は、目標達成に向けての過程で起きる自然な出来事であり、そこから何を学ぶかが重要です。「どうして上手くいかなかったんだろう?」「次はどうしたらいいかな?」と一緒に考える機会と捉えましょう。保護者が失敗に対して建設的な姿勢を示すことで、子供は失敗を恐れずに挑戦し、そこから学びを得るレジリエンス(困難から立ち直る力)を育んでいきます。
3. 様々な遊びやスポーツに触れる機会を提供し、特定の成果に固執しない
一つのスポーツや遊びで高い成果を目指すことも素晴らしいですが、非認知能力をバランス良く育むためには、様々な種類の遊びやスポーツに触れることも有効です。例えば、団体競技で協調性を育み、個人競技で集中力や自己管理能力を高め、自由な遊びで創造性や主体性を伸ばすなど、それぞれ異なる非認知能力が刺激されます。
特定の活動での「成果」や「レベル」に過度に固執せず、お子様が様々な経験を通じて、多様な非認知能力の芽を育んでいく過程を大切に見守りましょう。
過程を大切にする視点が、子供の「遊び」をより豊かな学びの時間に変える
日々の忙しい生活の中で、つい目の前の結果や成果に意識が向きがちになることもあるかと思います。しかし、お子様が遊びやスポーツに夢中になっている時間は、非認知能力というかけがえのない力を育むための、まさに「過程」そのものです。
結果ではなく、その過程でのお子様の小さな努力、工夫、友達とのやり取り、そして内面的な成長に目を向け、温かい声かけや見守りを続けること。この保護者の皆様の視点が、お子様の「遊び」の時間を、将来に繋がる豊かな学びの時間に変えていくことでしょう。
非認知能力は、すぐに目に見える形では現れないかもしれません。しかし、日々の過程を大切にする関わりを続けることで、お子様の中に確かに、生きるための強い力が育まれていきます。どうぞ、お子様の成長の過程を楽しみながら、遊びやスポーツの時間を大切に見守っていただければ幸いです。