遊びやスポーツで育む小学生の『役割を理解し責任を果たす力』:非認知能力を伸ばす保護者のヒント
遊びやスポーツが育む、将来に繋がる大切な力とは
お子様が夢中で遊んだり、スポーツに取り組んだりする姿を見守る中で、「この経験が将来、どのような力に繋がるのだろうか」とお考えになる保護者の皆様もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、遊びやスポーツの場では、学力のような認知能力だけでなく、将来を豊かに生きる上で基盤となる「非認知能力」が自然と育まれています。
非認知能力には、目標に向かって粘り強く取り組む力、感情をコントロールする力、他者と協力する力など、様々な側面がありますが、遊びやスポーツを通じて特に養われる大切な力の一つに、「役割を理解し、責任を果たす力」があります。これは、与えられた役割やチームの中での自分の立ち位置を理解し、その役割を果たすために行動する力であり、社会生活を送る上で不可欠な能力と言えます。
本記事では、遊びやスポーツのどのような場面で、子供たちの「役割を理解し責任を果たす力」が育まれるのかを具体的に解説し、保護者の皆様が日々の生活の中で実践できる声かけや関わり方のヒントをご紹介します。
遊びやスポーツにおける「役割」の多様性
子供たちの遊びやスポーツの場には、実に多様な「役割」が存在します。
- チームスポーツ: サッカーやバスケットボールにおけるポジション(フォワード、ディフェンダーなど)、野球における守備位置、リレーの走順など、それぞれのポジションには求められる役割があります。また、キャプテンや副キャプテン、道具の準備や片付けの担当など、プレー以外の役割もあります。
- 遊び: 鬼ごっこの「鬼」、かくれんぼの「鬼」、おままごとの「お父さん」「お母さん」、お店屋さんごっこの「店員さん」「お客さん」など、役割分担をして遊ぶ機会が多くあります。集団遊びでは、遊びのルールを決める係や、トラブルを仲裁する役割を自然と担うこともあります。
- 運動会やイベント: 応援団、係活動(用具係、決勝審判など)、出し物の担当など、大きなイベントにおいても様々な役割が与えられます。
これらの役割は、単に指示されたことをこなすだけでなく、その役割を果たすことで、遊びや活動全体が円滑に進み、目標達成に繋がることを子供たちは経験を通して学んでいきます。
「役割を理解し責任を果たす力」が育む非認知能力
遊びやスポーツの中で「役割を理解し責任を果たす」経験は、様々な非認知能力の育成に繋がります。
- 責任感: 自分の役割を果たすことが、チームや活動全体に影響を与えることを理解し、その役割を全うしようとする意識が芽生えます。「自分がここで頑張らないと、チームが勝てない」「自分が鬼役をしっかりやらないと、みんなが楽しくない」といった思いは、責任感の第一歩です。
- 協調性・チームワーク: 自分の役割と他のメンバーの役割の関係性を理解し、協力することの重要性を学びます。自分がボールを追いかける役割なら、パスを出す役割の仲間と連携するなど、互いの役割を尊重し合いながら一つの目標を目指す経験は、集団の中で生きる力を育みます。
- 自己調整能力: 自分の感情や衝動をコントロールし、役割に適した行動をとる必要性を感じます。例えば、試合で悔しいことがあっても、自分の役割(例:守備に戻る)を放棄しない、鬼ごっこで疲れても最後まで鬼を続ける、といった経験は、感情や行動を調整する力を養います。
- 状況判断力: 自分の役割を果たすために、刻々と変化する状況を把握し、適切な判断を下す力が求められます。相手チームの動きを見てポジションを変える、遊びの流れに合わせて自分の役割での振る舞いを調整するなど、実践的な判断力が磨かれます。
- 主体性: 与えられた役割をただこなすだけでなく、どうすればもっと役割を上手く果たせるか、工夫する主体性が生まれることもあります。また、集団の中で必要な役割を見つけ、自ら引き受ける積極性も育まれる可能性があります。
保護者ができる関わり方と声かけのヒント
お子様が遊びやスポーツを通じて「役割を理解し責任を果たす力」を育むためには、保護者の皆様の温かい見守りと適切な声かけが非常に効果的です。
1. 小さな役割と責任を与える
家庭内でも、お手伝いなどの小さな役割を与え、それをやり遂げることの責任を経験させましょう。
- 「今日の洗濯物たたみ係は〇〇くんだね。お願いできるかな?」
- 「ご飯を食べる前に、テーブルを拭いてくれる係をお願いします。」
- 「お風呂上りに、脱いだパジャマを洗濯かごに入れる係だよ。」
役割を終えたら、「ありがとう。〇〇くんのおかげで、ママ/パパは助かったよ」「〇〇くんが頑張ってくれたから、お家がきれいになったね」と感謝と貢献を具体的に伝えましょう。
2. 遊びやスポーツでの役割について尋ねる
習い事や友達との遊びから帰ってきた際に、今日どのような役割を担ったのか、どのように感じたのか尋ねてみましょう。
- 「今日のサッカーの試合、〇〇くんはどこを守ったの?どんな役割だったの?」
- 「友達と鬼ごっこしたんだね。鬼になった時は、どんな気持ちだった?」
- 「今日の練習で、何か係はあった?どんなことをしたの?」
お子様が自分の役割を言葉にする機会を作ることで、役割に対する意識を高めることができます。
3. 役割を全うした努力や工夫を具体的に褒める
結果だけでなく、役割を果たすために努力した過程や工夫した点を具体的に認め、褒めることが大切です。
- 「ディフェンダーとして、最後まで粘り強く相手についていったね!その頑張りがあったから、ピンチを防げたよ。」
- 「鬼役、暑い中一生懸命みんなを追いかけてえらかったね。〇〇くんのおかげで、みんな楽しそうだったよ。」
- 「係の仕事、時間内にきちんと終わらせることができてすごいね。工夫したことはある?」
「頑張ったね」だけでなく、具体的に「何をどう頑張ったか」を伝えることで、お子様は自分の行動と結果の繋がりをより深く理解できます。
4. うまくいかなかった経験も共に考える
役割をうまく果たせなかったり、責任を果たせなかったりした経験は、子供にとって学びの宝庫です。そのような時こそ、責めるのではなく、寄り添って共に考えましょう。
- 「今日の試合、自分のマークに抜かれてしまって悔しかったね。もし次同じ場面があったら、どんなことに気をつけてみようか?」
- 「係の仕事を忘れてしまったんだね。どうしたら忘れずに済むかな?明日はどうしてみようか?」
失敗から学び、次に活かす経験を重ねることで、レジリエンス(立ち直る力)や問題解決能力も同時に育まれます。
まとめ:遊びとスポーツで育む、社会で生きる力
遊びやスポーツにおける「役割を理解し責任を果たす力」は、将来お子様が社会の一員として、自分の役割を見つけ、責任を持って他者と協力しながら生きていくための大切な土台となります。
チームの中で自分の役割を果たす経験、遊びの中で責任を持って行動する経験は、子供たちの非認知能力を豊かに育む貴重な機会です。これらの経験を通じて培われた責任感や協調性、自己調整能力は、学業はもちろん、将来の人間関係や仕事においても必ず役立つ力となるでしょう。
日々の忙しさの中でも、お子様が遊びやスポーツに取り組む姿に少し目を向け、役割を果たそうとする小さな努力や成果を見つけたら、ぜひ温かい言葉で認めてあげてください。保護者の皆様の肯定的な関わりが、お子様の「役割を理解し責任を果たす力」をさらに大きく伸ばす力となるはずです。
このサイト「遊びながら学ぶチカラ」では、今後も遊びやスポーツを通じて育まれる様々な非認知能力について、保護者の皆様に役立つ情報を提供してまいります。