遊びやスポーツで育む小学生の『戦略的思考力』:先の展開を予測し最適解を見つける保護者のヒント
スポーツや遊びで育む小学生の『戦略的思考力』とは?
お子様が日々成長していく中で、「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えているかもしれません。非認知能力とは、学力テストでは測ることのできない、意欲や協調性、問題解決能力といった内面的な力のことを指します。これらの力は、子どもたちが将来社会で活躍していく上で非常に重要であると考えられています。
当サイトでは、特にスポーツや遊びを通じて育まれる非認知能力に焦点を当てています。今回は、数ある非認知能力の中でも、変化の速い現代社会で特に役立つとされる「戦略的思考力」について、それが小学生のお子様にとってどのような力であり、スポーツや遊びがその育成にどのように関わるのか、そして保護者の皆様が家庭でどのようにサポートできるのかをご紹介いたします。
小学生にとっての「戦略的思考力」
戦略的思考力と聞くと、ビジネスの会議室で使われるような難しいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、お子様たちの日常における戦略的思考力は、もっとシンプルで身近なものです。
小学生の戦略的思考力とは、簡単に言えば「目標を達成するために、今ある状況を把握し、次にどうするかをいくつか考え、その中から最も良さそうな方法を選んで実行し、結果を見て次に活かす力」のことです。
例えば、友達との遊びの中で「どうすれば鬼に捕まらないか」を考えたり、ゲームで「こうしたら相手は次にこう動くかな」と予測したり、ブロックで何かを作る時に「このパーツを先に使った方が安定するかな」と手順を考えたり。これらは全て、お子様なりに状況を分析し、先の展開を予測し、目標達成のための最適な方法を見つけようとする思考プロセスであり、戦略的思考力の芽生えと言えます。
この力は、学校での学習(どうすればこの問題を解けるかな、どうすれば発表がうまくいくかな)はもちろん、将来の仕事や人間関係においても、目標に向かって考え行動するための土台となります。
スポーツや遊びが戦略的思考力を育む理由
なぜ、スポーツや遊びが戦略的思考力の育成に適しているのでしょうか。それは、スポーツや遊びの中には、目標があり、それを達成するためのルールや状況の変化があり、自分で考え、判断し、行動する機会が豊富に含まれているからです。
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状況把握と予測: サッカーやバスケットボールのようなチームスポーツでは、自分や味方の位置、相手の位置、ボールの動きなど、刻一刻と変わる状況を把握する必要があります。鬼ごっこでも、鬼がどこにいるか、逃げられる場所はどこか、友達はどこへ向かっているかなどを瞬時に判断します。こうした「今、どうなっているか」を捉える経験は、戦略を立てる上でのスタート地点となります。さらに、「相手は次にどう動くか」「このパスは通るか」「この場所に隠れたら見つかるか」といった先の展開を予測する思考が自然と促されます。
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複数の選択肢の検討と意思決定: 状況を把握し、予測を立てた後、子どもたちは「どう動くか」「どう声をかけるか」「どの作戦を選ぶか」といった複数の選択肢の中から、自分にとって、あるいはチームにとって最も良いと思われる一つを選び、行動に移します。これはまさに、戦略を立て、意思決定を行うプロセスそのものです。「こっちのルートで逃げようか、いや、あっちの方が安全かな」「ドリブルで突破するか、パスを出すか」「このカードを使うか、温存するか」など、遊びの中には小さな意思決定の連続があります。
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結果の評価と戦略の修正: 立てた戦略を実行した結果、うまくいったり、いかなかったりします。遊びやスポーツでは、その結果が比較的すぐに現れます。例えば、選んだパスが通らなかった、隠れた場所が見つかってしまった、考えた手順ではうまくいかなかった、などです。うまくいかなかった場合に、「なぜうまくいかなかったのだろう?」「次はどうすれば良いかな?」と考えることは、戦略を評価し、改善する上で非常に重要です。成功した場合も、「どうしてうまくいったのかな?」と振り返ることで、成功パターンを学び、次に活かすことができます。この「実行→評価→修正」のサイクルを繰り返すことで、戦略的思考力は磨かれていきます。
家庭でできるサポートと声かけのヒント
では、保護者の皆様は、お子様が遊びやスポーツを通じて戦略的思考力を育むために、どのようなサポートができるでしょうか。大切なのは、結果だけを見るのではなく、お子様が考え、試行錯誤するプロセスに寄り添うことです。
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「どう考えたの?」と問いかける: 「どうしてそこでパスを出したの?」「どうやったら鬼に捕まらないと思ったの?」「あのゲーム、どうすれば勝てるかな?」など、お子様が行動した理由や、これからどうしたいのかを問いかけてみましょう。答えられなくても構いません。「うーん、なんとなく」という答えでも大丈夫です。考えるきっかけを与えることが重要です。
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結果ではなくプロセスに注目する: 試合に負けた、遊びでうまくいかなかった、といった時も、「どうして負けたの!」と責めるのではなく、「今日の試合、どうだった?」「どこが難しかったかな?」「次、もし同じ相手とやるとしたら、どうしてみる?」といった声かけをしてみましょう。うまくいった時も、「すごいね!」だけでなく、「どうやって決めたの?」「どんな風に考えたの?」と、プロセスに注目する質問をすることで、お子様は自分の考えや行動を言葉にする練習になります。
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一緒に考える時間を持つ: 時には、お子様と一緒に「どうしたらいいかな?」と考えてみるのも良いでしょう。ただし、保護者の方が答えや最適な戦略を教え込むのではなく、「こういう方法もあるかもしれないね」「もしこうしたら、どうなるかな?」といったように、一緒に選択肢を考えたり、予測を立ててみたりするスタンスが大切です。ボードゲームなどを一緒にプレイする際に、戦略について話し合うのも良い機会です。
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試行錯誤を認める: お子様が考えた戦略がうまくいかなかったとしても、それは決して無駄な経験ではありません。「一生懸命考えたんだね」「難しかったけど、よく頑張ったね」と、考え、試したこと自体を認めましょう。失敗を恐れずに色々な方法を試せる環境が、戦略的思考力を伸ばす上で重要です。
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見守る姿勢も大切に: 全てに口出しするのではなく、お子様が自分で考え、悩む時間も大切に見守りましょう。すぐに助けを求めるのではなく、まずは自分で考えて解決しようとする姿勢を育むことも、戦略的思考力に繋がります。
まとめ
遊びやスポーツは、子どもたちが楽しみながら、自然と考える力、予測する力、選択する力、そして振り返る力を養う絶好の機会です。これらの力は、将来お子様が様々な課題に立ち向かい、目標を達成していくための「戦略的思考力」の土台となります。
日々の忙しさの中で全てを完璧に行う必要はありません。お子様が何かに取り組んでいる時、少しだけ立ち止まって「どんなことを考えているのかな?」と想像し、ほんの一言「どうする?」や「どうだった?」と声をかけてみることから始めてみてはいかがでしょうか。保護者の皆様の温かい見守りと声かけが、お子様の「考えるチカラ」を育む大きな一歩となるはずです。